陽向先輩は僕の全てだった。



「昔の話でしょ。それに……あの時、陽向先輩は」



「その“陽向先輩”っての止めね?
二人でいる時くらい前みたいに呼べよ。じゃ、歩きながら話そっか♪」




そう言って自然に手を繋いでくる陽向先輩の手を振り払った。




「誰かに見られたらヤバイよ………ヒナ」


「…じゃ、人通りの少ない所で繋ごうな」



あぁ……君の笑顔は僕を惑わす。
色で例えるなら白。純粋で汚れがない。


しょーたも純粋だから
ヒナに似てて、結構好きだ。



そうやって、僕に期待させて
何を企んでいるのだろうか。



細い道を二人、手を繋いで歩く。
この瞬間が好きだ。


だって影だけ見れば恋人みたいだもん。




「弥生ちゃん影がどうかした?」


「べつに」


「そう?影と俺の手を交互に見てるから好きなのかと思った」




ビクッと体が震えた。
ヒナの手を見ていたなんて、無意識だ。


そんなこと思って……耳まで赤くなる。


そんな俺をヒナは笑うんだ。



「弥生ちゃん可愛い。俺のこと、そんな好きなんだ」


「…自意識過剰」



「え?そーなのか?
いつも表情とか変えない弥生ちゃんが唯一ちがう表情になるのって俺くらいだろ?」



あぁ、もうっ……なんで、そんなこと言うの。

仮にそれが本当で
気づいたとしても、そんなこと言わないで。