でも、ほんとに一人なら“その店”にいるのは、おかしいと疑う。
「陽向は?」
だって、その店は陽向のお気に入りの服屋だったから。
陽向の名前出したら、やっと弥生は俺を見た。その瞳がわずかに揺れた、ような気がした。
「いませんよ。僕1人です…」
「あ、そう」
「剛先輩は、会ったりするんですか?その、ヒナ、た先輩と」
俺は知ってる。
弥生が陽向のことを『ヒナ』と呼んでることを。
本当は知ってるけど、言わない。
だって言ってしまえば、二人を認めてしまうことになるのかな〜て…認めてないし。
「会ってないな。アイツは忙しそうだし」
親戚との付き合いとか。
会社のこととか。
後継ぎのこととか。
婚約者のこと…とか、ね。
知ってて言わない。
だって俺から弥生に伝えるのは、違うじゃん?
伝えなきゃいけないのは、陽向だから。

