「普通は先輩よりも先に来るもんじゃないー?」
「うっ…それは…はい、すみません」
嫌味のように言えば、翔太くんは本当に申し訳ないのか俯いて顔を上げようとしなかった。
だから、気付いてない。
俺が怒ってるんじゃなくて、笑ってるって。
「はは、冗談。かわいーな、翔太くん」
声色を明るめにすれば、俯いていた顔が俺を見つめる。部活していないからなのか、色白で…筋肉もついてない線の細い体格。
二重の茶色い瞳が、今は俺だけを映している。
「やっぱり翔太くんのこと、好きだな」
「……」
腕を伸ばして
ちょうど届かない距離を保つ翔太くん。
気持ちを言葉にして伝えることくらい、許してよ、な?

