走ってきたのかな。
すっごく汗びしょびしょじゃん、郁馬。
そんな急がなくても
遅刻には全然遠い時間帯なのに。
「……っ、なんで先に行ったんだ?」
「……あー、ごめん」
だって、待ったって来るはずないって思ったし。
「ごめん。昨日、叩いて……」
「気にすんな。怒るのも当然だ」
それだけひどいこと言った自覚はある。
「や、それでも手を上げるのはダメだったっつーか。たとえ、すーちゃんが泣いてても、理由も聞かず翔太のこと叩いたし……まじでごめんな?」
「……」
「あとで、すーちゃんから聞いた。翔太は悪くないって。仲直り……しねぇ?」
不安そうに言ってくる郁馬に少し笑えた。
「いいよ。俺、怒ってないし。
俺こそごめん。好きなヤツのこと悪く言われたら、誰だってああなるって分かってたのに」
それだけ鈴が好きって、自覚して
ただ、惨めだった。
怒りよりも諦めのほうが強かった。

