そんな瑛知の顔を
僕は見ることができなかった。
瑛知を置いて体育館を出るヒナの足は、迷うことなく保健室に向かっていた。
「は、離して……っ」
「嫌だね。離したって、どうせ立てないじゃん」
ムカッ。
冷たい瞳を向けられて、怒りが込み上げた。
そんなに怒るなら、助けなきゃいいじゃないか。
バタバタ手足 動かしても全く離してくれなくて、ヒナの思い通りになっていることが悔しい。
そんなとき、保健室から近い階段から降りてくる音が聞こえて、そっちに目を向けて目を見開いた。
「あれ。陽向~……と、弥生じゃん。
どーした?お姫様だっこなんてされて」
くすり。
笑い声を押さえて笑みを溢す、その先輩に殺意を向ける。
僕も聞きたいことが山ほどあるんだけど。
どうして、
どうして剛先輩が、目ぇ真っ赤にしたしょーたと一緒にいるの。

