「…へー、諦めたんだ。まあ、それが得策だろうな」
「剛先輩は僕に諦めてほしがってたもんね」
告白してから、ヒナと会うたび邪魔ばかりされていたような気がする。
でも、そこまでしてヒナから遠ざけようとする理由が未だによく分からない。
「弥生には傷ついてほしくなかったしな」
「傷つく?…どーして?」
「……んーと、…あ、ほら、巻けたぞテーピング」
あ、あからさまに話変えた。
僕から目を逸らし、テーピングを終えると、しゃがんでいた剛先輩はすくっと立ち上がった。
あの頃よりも身長が伸びて、顔はもともと男らしかったから、前よりモテてるだろうなぁー。
ヒナと並んだら、女の子がたくさん集まるのは目に浮かぶ。
「あの剛先輩、さっきの話…」
「詳しくは陽向に聞け。俺が言っていいような話じゃないから」
やっと目があったと思ったら
真剣な眼差しを向けられたから、不覚にもドキリとした。

