懐かしい声にふと昔を思い出した。



《ほんと、弥生は陽向が好きだよな~》



あの頃よりも声は低いかもしれないけど
しゃべり方は変わらないから…


僕は覚えている。




《もう陽向のことは諦めろ》



《顔も見たくない、アイツがそう言ったんだ。…意味、分かるだろ?弥生》




僕の気持ちも、ヒナの気持ちも
理解していた。

そして、僕に忠告してくれた。



それでも……僕は何度でも
ヒナに会いに行っていたけどね。






「…剛先輩」



「懐かしいな。中学ぶり?
あ、俺が巻き直してやるよ、貸せ」




そう言って剛先輩は
僕のテーピングをゆっくり外してくれた。




「自分でできます」



「いーから。てゆーか、けっこう腫れてんな。あの1年、弥生のこと相当嫌いなのなー」




あの1年とは、きっと瑛知のことだろう。
てゆーか、見てたのかな?
僕が瑛知に足踏まれた挙げ句、転けたと同時に足首ひねられたの。