ただ好きでいることが
こんなにも辛いだなんて……郁馬と出逢って
初めて知った。



油断していた俺を
剛さんは引き寄せて

俺の頬に手を添えて上に向かせた。




「うわ、頬 真っ赤!相当強く叩かれたのな」



「こんなの、平気です」




どちらかというと俺は…



「ん、きっと心の傷の方がデカイわな。
来いよ、翔太」



いつも君づけなのに、この時だけ
剛さんは、俺をそう呼んだ。



それに加えて、階段を上らせて
屋上にきて鍵閉めて


ここなら、大声だせるけど?だなんて。



ほんと、この人、お節介だ。





ぎゅっと優しく抱き締められて
一瞬、郁馬を想像したけれど、柑橘系の香水の匂いが剛さんを無性に意識させた。



それに、誰かの代わりにされる辛さは
自分が一番よく知ってるから

俺はしっかり剛さんだと確認して
強く、強く、抱き締め返した。





「ふっ……く……っ…」



「我慢すんな。俺以外、誰もいねーよ」





そう言われた瞬間、俺は今までにないくらい大声で泣いた。

すべてを涙で流すように。



物心がついてから、人前で泣いたのは


これが、初めてのことだった。