しかも、ドアを開けたのが…
「ごめん、先生が見当たんなくて……って、なにがあったんだよ、おい」
そう言って驚いてるコイツこそ
郁馬本人だったのだから。
俺はやっぱり、なにも言えなかった。
説明すら、したくなかった。
だって俺から鈴の想いを伝えたらいけないし、俺の想いなんて、なおさら言えない。
「いっ、郁くん……何でも、ない、よ……」
「何でもなくねぇだろ!?
だって、すーちゃん泣いてるし!」
歯切れが悪い鈴を、よしよしと頭を撫でて焦っている郁馬。
こんなときでも独占欲が働いて
触んなよ、とか思ってる自分が怖い。
無言の俺と泣きじゃくる鈴。
この状況を見て、郁馬はどう思うだろう。
きっと、確実に
「おい、翔太。…すーちゃんに何した?」
俺を怒るに決まってる。

