「やっぱり、あたし郁くんが好き」
本人ではなく俺にそう言った鈴に
俺の中の何かがブチッと音をたてて切れた。
「……んな」
「え…?」
「まじ、ふざけんな」
初めて鈴に対して暴言を吐いた。
いつも、小さい頃からずっと
鈴のワガママは俺が叶えてやったし、逆に可愛がってももらった。
今まで、鈴に不満なんてなかった。
あったとしても
いつも胸の中に抑え込んで数日 経てば忘れていた。
鈴は俺の……姉弟のような存在だったから。
「ふざけんな。鈴が郁馬に言った一言で、どれだけアイツが傷付いたと思う?学校では笑えなくなってたし、泣いたりしたんだぞ!」
出てきちゃだめ。そう思えば思うほど
気持ちがまたひとつ、口から零れていく。

