試合も終盤に迫ってきたというところ、弥生ちゃんが反撃と言わんばかりにオーラが変わったのが分かった。
「先輩」
「あ?」
「仕返しです」
そう言った弥生ちゃんは図体のでかい不良のディフェンスを左に避けた。
しかも……瑛知並みに速い。
しかし、それだけなら俺はもちろん、この不良も着いていける。
挑発された不良は怒りに任せて必死で弥生ちゃんの攻めを止めるだろう。
しかし、それでは終わらなかった。
シュッ―――
まるで踊るように。軽やかな動きで。
弥生ちゃんは左から右へコースチェンジする。
俺は魅入ってしまった。
その切り換えの速さは
瑛知以上……いや、俺以上……
まさか不良が、こんな小さいヤツに抜かれるなんて誰が想像しただろう。
弥生ちゃんは、不良を抜くと
フリースローラインでシュートを打った。
そのフォームに乱れはなく、誰もが息を飲んだ。

