ま、俺は犬より猫の方が好きだけど。
すると瑛知が俺から離れていく間際に
ぼやいた。
「弥生せんぱいって、泣かせ甲斐(ガイ)がありそうっすよね」
「まあね」
なんか……意味ありげだけど、そこはスルーしておく。
弥生ちゃんが、ずっと睨んでくるから
手をヒラヒラ振って笑ってみる。
すると、分かりやすいくらいにブンッと顔を背けてクラスのヤツとコートへ入っていってしまった。
あはっ、耳まで真っ赤なんだけど。
くすくす笑う俺を瑛知が不機嫌そうに見つめていたのには気づかずにいると、
「弥生せんぱいに勝ったら、俺だけのものになってください」
瑛知は真顔で急にそんなこと言ってきた。
いつも犬みたいに可愛いのに、今は男前な顔してる。
「んー…考えとく」
「球技大会と1on1で勝敗つけるんで、よかったら見ててくださいね」
へえー勝手にそんなことになってるんだ。
昨日まで弥生ちゃんと、帰ってたけど
全くその話されなかったんだけど。
なにも話してくれなかった弥生ちゃんに、ムカッとする。

