『早く僕の上から退いてってば』
『…さっきまでは泣いて喜んでたくせにー。
さっきまでの可愛い弥生ちゃんは、どこ行ったのかなー』
はあ…と溜め息つくヒナに睨みつける。
べつに喜んでないし。
ちょっとヒナに流されて泣いちゃっただけだし。
勘違いはやめてほしい。
ふいっと首を横に向けて
ヒナの顔を見ることを拒絶していた。
そんな僕にヒナはボソッと囁く。
『真杉……まじ腹立つわ』
『え? なんて……ひゃっ』
急にガブッて首筋を噛まれて
痛さのあまり叫んでしまった僕。
いった……まじで痛い。
歯形ついたら、どうしてくれんの。
『これは真杉にはされてないでしょ。
まだ足りないけど、これで弥生のことも許してあげる』
…意味わかんない。
『好き、って言ったら許すって言ったじゃん』
『それでも許せないことってあるだろ?
なに、また痛いの……したいの?』
獣が獲物を狩るような眼差しが
僕に恐怖感を与えた。
そのせいで何も言えずにいると、ヒナは僕の髪をくしゃくしゃにして、いつものように笑った。
『くくっ…もうしないって。それじゃ、そろそろ帰ろっか』
そう言って僕たちは
あの日に終わりを告げたのだ。

