「なに?そんなに喜ぶこと?」
べつに特別なことなんて、してないよ。
友達と買い物へ来て、一緒に悩んで買い物をする、そんなのフツーのこと。
それなのに、どうして……
きょとんとしてる僕にヒナは僕の髪に顔をすり寄せる。
「ははっ、わかってないなー。
いつも冷たい弥生ちゃんが俺のために選んでくれたんだよ?そんなの、嬉しいに決まってる」
「う、自惚れないでよ…」
「それに、俺の好きな色、覚えてたんだな」
かぁ~と耳まで熱くなる。
そんなの、偶然だし。
中学からの付き合いだし。
「偶然だよ、こんなの」
「偶然だったとしても。その事実が嬉しいんだ」
あぁ……調子が狂う。
閉じ込めたものが、ボタボタと溢れていくのが分かる。
バカな僕。単純な僕。
もしも、あの頃の僕なら
きっとヒナに、たくさん伝えてるのかもね。
《ヒナの好きなものを、僕が忘れる訳ないよっ!》
きっと必死になって
僕は君に話すんだろうね。過去なら、だけど。

