梅雨はまだらしいが、今日は朝から雨。


待ち合わせの駅にはまたあの空色傘を持って待ってる蒼。


今日はさすがに俺も傘をさしてる。


因みに色は黒。


なんの飾りもない、シンプルな、親が勝手に買ったもの。


「おはよう♪」


蒼の元気な声でまた1日が動き出した。


「なぁ、蒼。
なんでその色の傘なんだ?
なんか、お前なら白の可愛いのとか、
もっと女子らしいっての選びそう。」


指摘された傘をチラリ見上げてから俺をみる。


「だって、初めて空と公園で会った
夏の日の空の色だし…
それに、私は空に包まれてるみたいな
この空間が好きなんだもんっ」


そう笑顔を向けてから傘を肩に乗せて隠れるようにする。


「おまっ…‥」


嬉しくてしかたないけど、傘が邪魔で近づけなくてもどかしかった。


「すげぇ嬉しい…ありがとな。」


「うんっ!!」


少し屈んで傘の中を覗き込みながら言うと、照れた顔の蒼が嬉しそうにニコニコしながら返事した。


そんな理由で選ばれた傘の色だと分かって、単純に納得した。


蒼の心の奥ではもっと思い入れがあったことは、気がつかなかった。


それから並んで歩き校舎に入った。