大浴場のあるロビーで待ってると、「あのぉ~」と猫なで声で呼び掛けられた。
こんなところに知り合いがいるはずはないので、かなり、冷めた目で振り返る。
自分に自信があるのか、女が二人、しなりながら俺にベタベタ触って、腕を絡めてきた。
「離せ…」
睨みながら低い声で威嚇するように言うと、ビクッとするが、触ってる手は離れない。
だから俺は思いきり腕を振るいながら、体も引いて、そいつらから離れた。
「臭ぇし、気持ち悪りぃんで、
触んないでくんねえかな…」
「なっ…!?
し、失礼ねっ!!
何よっ、ちょっと声かけて
あげたのに、
偉そうに…」
何だか逆ギレってのか、赤い顔して、さながら般若みたいな顔でどっかに行ってしまった。
「もう、いぃ~?」
すぐ後ろの通路の陰から、蒼がひょっこりと顔を出してきた。
「なんだよぉ、助けてくれよぉ」
苦笑しながら訴えると「イヤだよぉ、」なんて笑ってる。
ほんの少しのヤキモチと、絶大な信頼。
俺達にはそれが互いに分かる。
まだ、1年…だけど濃い1年を過ごしてきたから、解り合える。
幸せな気分で部屋まで手を繋いで戻った。
ホテルは低層造りだったので、あまり外を見ることはなく、部屋のソファに座る。
何やら小さな箱を持って俺に微笑む。

