☆空色の傘☆【完】



大浴場のあるロビーで待ってると、「あのぉ~」と猫なで声で呼び掛けられた。


こんなところに知り合いがいるはずはないので、かなり、冷めた目で振り返る。


自分に自信があるのか、女が二人、しなりながら俺にベタベタ触って、腕を絡めてきた。


「離せ…」


睨みながら低い声で威嚇するように言うと、ビクッとするが、触ってる手は離れない。


だから俺は思いきり腕を振るいながら、体も引いて、そいつらから離れた。


「臭ぇし、気持ち悪りぃんで、
触んないでくんねえかな…」


「なっ…!?
し、失礼ねっ!!
何よっ、ちょっと声かけて
あげたのに、
偉そうに…」


何だか逆ギレってのか、赤い顔して、さながら般若みたいな顔でどっかに行ってしまった。


「もう、いぃ~?」


すぐ後ろの通路の陰から、蒼がひょっこりと顔を出してきた。


「なんだよぉ、助けてくれよぉ」


苦笑しながら訴えると「イヤだよぉ、」なんて笑ってる。


ほんの少しのヤキモチと、絶大な信頼。


俺達にはそれが互いに分かる。


まだ、1年…だけど濃い1年を過ごしてきたから、解り合える。


幸せな気分で部屋まで手を繋いで戻った。


ホテルは低層造りだったので、あまり外を見ることはなく、部屋のソファに座る。


何やら小さな箱を持って俺に微笑む。