「りょ~かい、んじゃ、
俺は今日は取り合えず帰るわ…」


そう言って、蒼の頭を愛しげに優しく撫でてから、俺に手をあげて病室を出ていった。


☆☆☆


………


……


気持ちいい…


何だろ…


頬に冷たさを感じてガバッと起き上がる。


「あ…れっ……?」


どうやら俺は蒼のベッドサイドでそのまま、突っ伏して寝てしまったらしい……


「ごめっ!!やべ…」


「フフッ…いいよぉ、空が居てくれて
嬉しいもん」


ニコッとしながらもその瞳はどこか、遠慮や苦しさを表すように揺れて見えた。


体を起こして座り直すと蒼の頬に右手を伸ばしてそっと撫でてみる。


「蒼…おかえり…」


ポロッと、考えなしに出た言葉だった。


「…ん、うん、空…ただいまぁ……」


そう言うと、蒼は腕で顔を覆いながら、声をあげて泣いた……。


蒼…守ってやれなくて、ごめんな。


でも、これからもどんなことがあっても、俺は蒼の傍に居るから、居たいから、避けないでくれよ?


そんな思いを込めて、蒼の腕や頭をなで続けた。


☆☆☆


「失礼するわねぇ、あら、うさぎさん」


ノックと共に看護師の女性が入ってきて、ようやく涙の収まった蒼の、真っ赤な目をみて微笑んだ。


「うさぎとか、そんな可愛げなもんじゃ…」


いいかけると、「うるさいっ!」と睨まれた。