右手を蒼から離してもう一度じっくりと両手でドレスを持ってみる。
手縫いらしく、ヒト針ひと針、丁寧に作り上げてある。
「蒼、最高の贈り物だよ…
ありがとう…
なぁ…俺たち、この間のモデルの時みたいに
二人で一緒にいるとさ、
いつも以上な力…出せる気、しないか?」
少し前から感じていた二人の間のパワー。
それはもしかしたら、二人の夢へと向かって発揮されるんじゃないか。
手の中のドレスを見つめながらだんだんと、確信になっていくのを感じた。
☆☆☆
店を出て、蒼の家まで送りながらさっきの夢を考える。
「なぁ、蒼は、俺みたいに
服とか小物をデザインするのは
嫌い、ってか、苦手?」
「そう、だ、ね~
見たものを作り上げるのは、
大好きなんだけどね、
私、想像力とか、ないみたいで、
浮かばない、その代わり、製図見たら
手順とか、より良い材料とか
ポンポン浮かぶっ!!」
そう、屈託なく笑う。
俺は微笑み返しながら自分は…と考える。
俺は、こんな服があったらいいなとか、着たいなぁとか、ペンが進むかわりに、裁縫は普通の男子並みで余り好きではない。
とにかく、アイデアばかりが浮かぶんだ。
俺と蒼は二人でちょうど、一人前のデザイナーとしての仕事をこなしていることになる。
俺は、それが可能なことなのか、星野さんにそのうちに聞いてみたいと思った。

