たぶん…自惚れてる訳ではないが、チョコかなと思い、振り返らず「バレンタインに関することなら一切聞かないから」と言ってまた、歩き出す。
すると、走り込んだのか目の前にこられて、嫌でも止まるはめになる。
そして、隣の蒼を完全に無視する形で俺の方に体を寄せて、俺の胸の辺りになんかの包みを押し付けるようにしてくる。
俺は直ぐに、蒼と繋いでいた左手をそのまま蒼の腰に持っていくと、自然と蒼の手が離れてその手を俺の左手に添えてくれる。
それと同時に右手で押し付けられていたものを押し返し、払うように腕をふる。
「邪魔…どけよ…」
怒りの感情を隠さず声にも目にも込める。
ビクッと目の前の女子が震えて後ずさる。
少し避けるようにして、その横を通り過ぎた。
後ろからすすり泣くような音が聞こえた気がしたが、それは、俺の神経を逆撫でこそすれ、同情や申し訳なさなどは一切、感じなかった。
視線を感じて左下に目線を下げると、不安か不快か悲しみか…入り交じった瞳で見上げてくるから、「大丈夫だ」と言っておでこにキスをし、飲み物を買いに行った。
☆☆☆
教室に戻ると、なんだか少し騒がしい。
ランチタイムだからって感じではなくて、騒ぎがあった後みたいに、ピリピリした空気だ。
そして、みんなが俺たちを見たからすぐに『あぁ…なんかあったんだな』と勘づいた。

