「帰ろうよ」 不機嫌に言う。 「なんも ないじゃん」 「見てみ」 暗がりから歩いて来 た黒ずくめの男をさ して、Bが低く囁い た。 帽子を目深に被り、 マスクと色の濃いサ ングラスをつけた、 怪しい格好の人物 だ。男はポケットに 手を突っこみ、猫背 になって、店内をの ぞきこむようにしな がらうろうろする。 牡丹は目を凝らし た。 Bと、なんか似て る? 落ち着きなく周囲 をうかがい、黒ずく めはヤモリのように ガラスに 張りついた。