それから明け方になり…

太郎は最後のてるてる坊主にサインペンで顔を書き終えた。




「で…できたぜ…」


家族が寝静まった居間で、
太郎の周りには千羽鶴ならぬ千てるてる坊主が完成していた。


てるてる坊主の背中には
【晴れてくれ】【頼む…晴れろ!】と神様へのメッセージも忘れず書いた。


あまりの疲労に指は腱鞘炎になり髪には白髪が増えた。


太郎は眠い目を擦りながらそれをまとめてカーテンレールに吊るす。


同時に早朝のTV番組がこう言った。


『今日の降水確率は0%。青空が晴れ渡るでしょう』


勝利した太郎は歓喜の雄叫びをあげてから、そのまま倒れるようにグッスリ眠りについた。







次に太郎が目覚めたのは8時半だった。


「うわぁぁぁ!ちこくじゃねぇか!!」


太郎は母親が用意してくれた朝カレーを食べ、猛スピードで身仕度をする。


「ちょっとあんたまたそんな服装して風邪引くよ」


玄関を飛び出す太郎に母親が言う。


真冬にも関わらず、太郎は毎日白いポロシャツに半ズボンという服装だ。


しかし母親に心配されようが、クラスの女子にキモいと言われようが


太郎の中で小学校に登校すると言えば、イコール半袖半ズボンは絶対だった。


「それにあんた、あのカーテンの邪魔なの何なのよ、ティッシュ全部使ってしもて…」


「てるてる坊主だ!つかお袋あれ3日間絶対に外すなよ?雨降るから!」



太郎は母親に向かって念を押すと、小学校に猛ダッシュした。