嗤う鏡

 

 そしてある日、いつものようにあの鏡の前でセットをしていた。
 この頃は、信治が自分でセットするようになっていた。鏡も何も言わなかった。
 だが、その日に限って鏡が注意したのだ。最初の時のように、口角を上げてニヤリと笑いながら。


「おい信治! それは似合わねえぜ!」


 自分ではいいと思ったコーディネートを、鏡の中の自分に笑いながら否定される。
 信治は性格的に短気な人間だったため、そのことに必要以上に腹を立てた。
 


「うるせえよ! 自分のことは自分が一番分かってんだよ!」

「そうは言ってもそれは―――」

「このくそ鏡!」


 信治はそう言って、傍にあったワックスの容器を鏡に向かって思いっきり投げつけた。