嗤う鏡

 

 次の日、信じられないことが起きた。
 信治が鏡の前に立って髪を少しだけ整えていると、


「だっせーなお前」


と、鏡の中の信治が言ったのだ。


「!」


 驚いて後ずさるが、鏡の中の信治はそのままだ。
 それどころか、口角を上げてニヤッと笑う。


「驚くなよ。今日から俺はお前のスタイリストになるんだからな」

「は?」

「俺がお前をいい男にしてやるっつってんだよ」


 鏡の中の"信治"は言った。
 その姿と口調が、普段の自分とあまりに違っていて、笑いがこみ上げてくる。


「とりあえずまずは頭セットしろ」


 信治は言われるがままにセットした。
 何度か失敗して怒られながら。

 そして出来上がりを見て思わず息を呑んだ。髪型次第でこんなにも印象が違うのかと。


「上出来だ。じゃあ次―――」


 信治はコーディネートの全てを鏡の言うとおりにした。