嗤う鏡

 

 目は細く、顔は痩せている。黒い髪には少しだけ白髪が混じっていたが、それが年のせいなのかストレスのせいなのかは分からなかった。

 二十代にも見えるし、五十代にも見えた。

 年齢不詳の男―――。


「何かお探しですか?」

「あっ、いえ……」

「それならおすすめがあるんです。あなたにぴったりな物が」


 男はそう言って店の角へ歩いていった。 不審に思いながらも信治はついていく。


「これです」


 男が指さしたのは、古い姿見だった。所々に傷が付いていて、かなり色褪せている。
 普段の信治なら絶対にいらないと言っただろう。
 だが、その日は違った。目の前にある古い鏡が信治の心を掴んだ。

 欲しい。これが欲しい。


「買い……ます……」


 信治がそう言うと、男は不適な笑みを浮かべた。


「一つだけ注意があります。絶対に割らないでください。絶対にですよ」

「はい……」


 信治は姿見を買った。
 男に家まで姿見を届けてもらい、箪笥の横に備え付けた。