それは偶然だった。
いつものように会社に行き、いつものように働いた。そしていつものように真っ直ぐ家に帰っていると、見たことのない店があった。
何も書かれていない真っ白な壁。
昔風のベルの付いた扉。
そこには木の板が掛けられてあった。
「骨董品・アンティーク―――古神屋」
信治にはそんな趣味はなく、むしろ気持ち悪いと思っていたのに、何故か気になった。
扉を開いた瞬間、ちりーん、とベルが鳴った。恐る恐る中に入る。
店内は薄暗く、華やかな雰囲気は一切なかった。所狭しと棚が並べられ、そこに埃の被った商品が置かれていた。
「いらっしゃい」
いきなり店の奥から声が聞こえて、信治の体がびくん、と震える。店の奥から出てきたのは、細身の男だった。

