嗤う鏡

 









「……あの死に方異常ですよね。人間がやったとは思えませんよ」


 新人の巡査が言った。
 マンションで男が殺されたのだ。
 隣に住む老婦が悲鳴と鉄臭さを感じ、慌てて警察に通報。警察が駆けつけたときには既に悲鳴は止んでおり、笑い声が響いていた。少し疑いながらドアを開けたところ、笑い声が止み、猛烈な血の臭いがして、事件が発覚した。

 男は割れた鏡の前で、まるで鏡の亀裂がそのまま顔に映ったかように顔の前半分が千切られているというおぞましい姿で発見された。


「大丈夫か? 顔色悪いぞ」


巡査長が言った。


「あんな死体見るの初めてで……うっ」


 巡査が口を手で覆う。
 犯人は返り血を大量に浴びているはずなのだが、廊下や玄関などには一滴も血痕がなかった。

 まさに怪奇事件だった。