嗤う鏡

 

 ぶち、と恐ろしいほど強い力で鼻がもぎ取られた。


「あ゙ああ゙あ゙ああ―――っ!」


 何かがいる。
 何かが自分を殺そうとしている。

 見開いている目には血が飛んで視界を赤く染める。
 まだちゃんと見えるところから辛うじて見えた光景。


「ひっ―――!」


 鏡の中から何本もの白い腕が信治に向かって伸びていた。
 その腕は肉を引き裂き、開いていた両目をぷち、と潰す。
 途端にどろっ、と流れ出る血と粘液。信治をさらなる激痛が襲う。

 部屋は息を止めてもむせ返るほどの猛烈な血の臭いが満ちていた。
 だが、鼻をもがれた信治は、臭いを感じない。

 もう何が起こっているのか分からなかった。

 脳が激痛で機能していなかった。

 この状態で生きていることが不思議だった。

 頭蓋に響く笑い声。そして脳をぐちゃぐちゃに掻き回される感触を感じて―――

 信治の意識は完全に無くなった。