「……見られてる」

「仕方ないよ。
こんな学校に編入してくる人は珍しいから。
…それに、理事長の娘だって噂も広まってるだろうから。」


思わず口に出してしまった言葉に真希は疑問を解消する答えをくれた。


「暫くは我慢しな。」

「…別に気にしない」


気にしないと言うのは本当のことだ。

大勢の人がいる場所に来るのは初めてのことだったが、好奇の視線に晒されたことは何度かあった。

それがあまりにも多いため、他人のことを一々気にしなくなったのである。

一々気にしていてはキリがないことを学習したのである。


「そうだ。
彩優花、今まで学校に行ったことがないんだって?」

「……うん。
何か、変…?」

「義務教育の間くらいは学校、行こうよ…」

「行かなくていい。
って言われた。
勉強はしてた。
だから、学校には行かなくていい…」

「…何か、違うと思うよ。
……うん」


学校に行かなくてはいけないのは最低限の教育を受けないといけないから。

だから、家で家庭教師に勉強を教われば、学校に行かなくていい。

男の人も言っていたし…。

学校の勉強を全くしていなかったという訳でもない。

定期的にテストをして、学校側は彩優花の学力を見ていた。

しかし、その結果があまりにもいいので、小学校、中学校の先生は口出しができなかったのである。

そのため、9年間も特例を認めざるを得なかったのである。