嘘のようだ。

またここで、こうやってあの時間を再現できるなんて。

確かに自転車じゃないし、夏じゃない。

でも。

髪の毛は伸びた。

ヘルメットからはみ出した髪の毛が、ゆらゆらとなびいていた。

彩穂が風磨に問う。




「ねぇ風磨、私たち、きちんと大人になったかな?」





「おう。俺たちは、あの頃より…きっと大人になったよ」





そう言った風磨は、バイクを加速させた。

冷たい風が頬を撫で、彩穂は風磨にしがみつく。