「元カレいたじゃん」



友達だったはずなのに、名前を言わないのはやはり不機嫌の理由だからか。




「アイツが最初付き合い出した当初、かなりのろけてきてたのにそれが愚痴や怒りに変わってた時も全部聞かされてた。だから知ってる、それで興味もった」


意味がわからない、そんな表情をしていたのだろうか。

苦笑をもらし、頭を撫でられた。細く、大きな手だ。



「聞けば聞くほど愛されてるとしか思えなかったから。話してても普通に楽しい子で、異質。興味もったら好きとしか感じなかった」


それでいいのだろうか。
結局、私は……………。


「付き合って、って言ったら付き合ってくれるの?」


「うん、もちろん」


「ほんとの、ほんと?」


「だから迫ったんでしょ」


先輩は優しく、喉にキスをくれた。

初めて受け入れてくれた人だった。

幸せすぎて、そのあとの記憶はなかった。




後に知ったのは付き合って剥がれてきた《獣》の数々。

先輩の草食系具合に惹かれていた恋人たちはあまりの変貌についていけなかったらしい。

シマウマはライオンに変身する。

「い、っ…………」 痺れた喉には鬱血よりも強烈な噛み跡が残される。

顔をあげた先輩は満足気に微笑んで、舌舐めずりをした。



「喉、噛むの、ハマるね」



end