自分の好きな女が自分を神だとか仏だとか思っていたらどうする?

そんなこと起こるのかい、と言われればそれまでだ。

実際そうなっているから仕方ねぇ。



「そば食いたい。いーよな、金魚掬いもやりてぇな」


ちらり、とそいつを見れば笑顔で「今度焼きそばいれますね!金魚は買ってきましょうか」と、お前は子分か、俺は親分か。


二つくくりの黒髪は艶やかに肩にかかり、銀縁フレームの奥には髪の毛と同じ瞳がある。

制服はきっちり着こなしていかにも真面目で、俺とは正反対である。


学校の非常階段で昼休みに二人で向き合って弁当を食うのは日課だ。

お礼という名目の弁当は下にいるこいつが作ったものである。


好きになったのは自然の摂理かもしれない。
いつの間にか居心地が良くて、安らぐ、こんな気持ちは久々だった。

だから、頑張って祭りに誘おうとしているのだが。



「なぁ、お前さ。あーーー」

「なんですか?……美味しくないですか」

「いや、いつも通りうめぇけど」

「良かった!供えるならやっぱり美味しいものじゃないと!」

「おい、俺は死んじゃあねぇぞ」


おっそろしく鈍いこいつを本当に何とかしてほしい。