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いつからかわからない。
けれど好きになっていたのはずっと昔のことだろうと思う。

いつも元気で涙を見せない彼女は素直に兄貴を好きと言い続けた。

何百回告白すればちゃんと玉砕して俺に希望を与えてくれるのだろう。

ずっとそんなことを考えて、自分は逃げていた。


やっと彼女は隣にいるのに、彼女は笑っていない。どこか自虐めいた態度。やはり、どうすることもできない。


親がいないから、と連れ込んだ自室で抱き締めた。ずっと、ほんとはこうしていたかったのに、心が乾いていく。この柔らかさを求めていたのに、どうして。


俺の名前を不思議そうに呼んだ彼女。
悪魔な彼女。

だから抱き締める力を強くする。

そして覚悟を決める。これがどういうことかわかっている。 彼女と兄貴はきっと同族なのだろう。




違う、兄貴が染めた。
今度は彼女が俺を染める。


「いつき、」

その悪魔な声で指先で、闇のスパイラルに落ちていく。



end