「…………楼」

ゆっくり手を伸ばされ、それは頬を滑って耳の裏からかき撫でた。

彼女が隙を見せたのは一瞬でまた仮面を被る。


「いつもなら応援してくれるじゃないか。」


女王という付加価値をわかっている微笑だ。
その裏側は表にもシミのように滲んでいる。
背中に気味が悪いくらい大袈裟に虫が這っているような気分にさらされる。

かき揚げられてすかれる。その行為を愛しむように、何度も触れられていた。

それでも彼女の背後から現れる真っ黒なそれが帳消しにしてしまう。

「もう応援なんてできませんよ。なんであの方の元へ行かれるのですか。」

出てくるのは我儘で拙い言葉だけだ。
女王は見下したように見上げる。

「これは運命なことよ。いちいち理由なんざない。楼、お前はいつから餓鬼に等しい___寧ろそれ以下の下等生物になっていたのだ?殺されたいのか?」

「貴女の前では愚かにもなりますよ。こんなに愛しているのに」

眉を潜め、ゆるゆる撫でていた髪を毟る勢いで後ろに引っ張られた。

「……っ」思わず顔を歪める。

「本当のことじゃないですか、何が、そんなに気に入らない」

ずっと、言い続けて、あしらわれていた。
憂い顔で微笑んで、私は興味ないとずっと言われ続けて。


今は血が出そうな程きつく唇を噛み締めている。