「………結婚、おめでとう。」



そう言葉では祝福しているのに、声はどこか落ちていた元彼氏は私を見つめている。

その目には憎悪だとか、愛情だとか、友情と矛盾してるものがごった煮になっていた。
私はそれを気づかないフリして、笑顔を被った。定評のある、安い笑顔だ。

「ありがと。幸せになるわ」

ぴくり、と口の端が歪んだ。
これはいつも苛立っているときの無意識な仕草だ。

______半年前に別れて、初めてちゃんと顔を合わせた。


誰も別れたとは思っていないだろう。
寿退社をする私がこの花嫁でないことを誰が知っているというのだろうか。



今日で最後だった仕事。
その夜に会うなんて狙ってたとしか思えない。