『ロウ、ロウがそばにいてくれるの?ずっと』




______そう言って邪気なく微笑む貴女は大層な小悪魔ですね。



深くなった闇に幸せそうな吐息が部屋に木霊する。

布団の中、無防備に眠る小悪魔の隣で今日の彼女を振り返っていたところだ。



_____彼女と出会って、数ヶ月。



彼女は絆、という言葉に弱いことを知った。

それは両親のいないせいなのかそれはよくわからないが、そう言えば何でも許してくれる。


悪い大人だ、と咎められても実質何もしていない。でも、否定する気はない。


俺は悪い大人なのだ。



「俺が_____俺がこういうこともしたい、家族なのだからと言ったら貴女は受け入れてくれますか?それとも家族だから、なら貴女は俺以外も受け入れますか?」


眠っているからこそ打ち明かせる胸の奥。

スタンドライトの柔らかい光をゆっくり落とす。

彼女の頬に掌を当てる。温かい。


それは俺にとっては_____猛毒だ。


そんなことも彼女は知らない。知るはずもないのだ。



首筋の付け根から鎖骨まで指をゆっくり滑らせる。

彼女はくすぐったそうに苦悶に眉を寄せる。
その、表情すらも毒なのだ。



「俺がここを何度噛みついて、何度血を啜ったのか______それでも俺を受け入れてくれますか」



そう振り絞るように言って、噛みついた跡をなぞった。

もう跡が残っていないとしても俺は覚えている。


きめ細かい肌も、甘い血の味も。


家族に憧れている彼女に家族になろうか、と言った罰なのだろうか。

捕食者と獲物という関係でしかないのに。


月は俺の過ちを知っている。
そして本当の姿も知っている。
そんな月は俺を嘲笑って指を指している。

それでも今日も過ちを犯すのだろう。
最大の言い訳をつけて。

夜は長い。


end