あーーー…………。




「サトにーちゃーん!!」

丸めた卒業証書片手に、振り返ってみれば満面の笑みの紀美花がいた。


にぱー、と。本当ににぱーっていう効果音で昔から笑って、遠慮なく腰に絡み付いてくる。


「おいこら、そういう年でもねぇだろ」


軽くでこを手のひらで押すがびくともしない。

それよひもカーディガンを握りしめる。「イヤダー」っていくつだお前。


あぁ、ヨレヨレ決定だな。






卒業式_____。
案外感慨深いもんで、周りの涙に煽られてか少々センチメタルな気分になる。

校長の長い話も最後か、なんて思えばそんな気分も一瞬にして霧散したが。

式が終わって、周りの連中が写真撮ろう風潮になり皆がシャッターを次々と切る。

佐藤が鼻水足らしながら、写真撮ろうとか言ってくるもんだから思わず笑ってしまった。


「泣いてもないのに鼻水か、思い出だな」


「うるせぇっ!花粉症ってつれぇんだからな!」


携帯で画像を見ると、くしゃみ前の間抜けな佐藤にまた笑う。

佐藤との会話が沈黙してから、佐藤は突然話題を変えた。


「あのさーー紀美花とどうなんの?」


「は?」


何で何でお前が俺が紀美花のこと___。


「気づいてなかったのかぁ。いやさぁ、紀美花は勿論お前を見るとかなり喜ぶんだけどね。お前も少なからず顔、緩んでんだよなぁ。ぶっちゃけ、勘」


ティッシュを取り出して、へっくしゅん、と鼻をかむ。

紀美花の兄である佐藤に気付かれないように、かなり慎重になっていたのに。


「まぁさ、ちょい複雑だけど頑張ってほしいのさ、サト兄ちゃん。俺の妹泣かすなよ!!」


そう言って、彼女の朝美を見つけて走り出していった佐藤に呆然とした。