弾き終わって、


宮原くんは静かに笑った。



「すげぇ!!自分で弾いてるみたいだったよ」



嬉しそうに、鍵盤を人差し指で押してみる宮原くん。



「俺も人並みになんか出来たらなぁ」



『出来るよ。宮原くんは』



「えっ…」




あたしは戸惑う宮原くんの大きな手を



そっと包むようにとった。



『宮原くん、ピアノを弾ける手をしてる』



「俺の手…?」



『そう。とってもきれいな手』



まだ、あたしが宮原くんだと認識できなかった、傷だらけの宮原くんの時も



宮原くんだとわかったあとも



優しく触れた手が温かくて、



ずっとそう思ってた。



「そんな、だって俺、この手で-」



“いっぱい人を傷つけてきたから”



宮原くんが黙り込んでも言いたいことが伝わった。



だから、切なく笑う彼の表情がつらかった。



『ねぇ、宮原くん……』



だから、証明してあげたかった。


気付かせたかったの。


『お願いがあるの』


宮原くんはもう大丈夫だよって。


「お願い・・・?」



『あたしの、あたしの代わりに』


握る手の力をいっそう強めた。



宮原くんに、思いを届けるように。



『あたしの代わりに、ピアノを弾いて欲しいの』





「え・・・・?」