綺麗だった。


そう。感想を述べるなら、
“綺麗”だった。



なんで?あの時は、あんなに傷だらけで、
みっともなかったはずなのに…。


「ごめん、あのあと、奈々と別れた後、
 中埜と二人でもう一度ここに来たんだ」


『え?』


「せめて、せめて綺麗にしてあげようって。
 親にも、警察にも、担任にも、誰にも
 いえなかった償いとして、
 こんな傷だらけじゃあまりにも惨すぎるって……」



「茜……。なんで俺に言ってくれなかったんだよ。
 黙ってないで相談すれば……」


「いえないだろ!?お前は、お前はさ、
 あんなに毎日、俺に五十嵐のこと…」


『え?あたし?』


「なっ…!?お前、今それ言うのか?」


突然、顔を真っ赤にした宮原くん。


あたしはきょとんとしながら宮原くんを見つめた。


「あのね、五十嵐。実はこいつ……」


『え?何、何!?』


「茜!お前、五十嵐に許してもらったからって
 調子に乗ってんなよ…!?」


『あー。宮原くん、ダメだよ。そんな言い方しちゃ』



「ダメだぞ。宮原くん」


「茜。お前まじでふざけんなよ?」


『あはは。二人って、本当に仲良しだね』


「「仲良しじゃねぇよ!!」」




いつの間にか、あたしたちは湿っぽい雰囲気から
明るくなっていて、


あの後、あたしの遺体はあたしの希望でもう一度
埋めなおした。


美祐と茜くんのためにも、黙っておくことにして
その日は3人とも別れることになったの。



あたしにはまだ、やるべきことが残ってる。



美祐の心の中のストレスを、解消させてあげること。
そして、
奈々のこと……。



『二人とも、気をつけて帰ってね?』


「五十嵐、いつもここにいるの?」


「うん。大丈夫。あたし、学校から出れないみたいだし。
 明日また来てくれれば寂しくないから」



「そか、じゃあ、また明日…」



あたしは二人を見送った後、あたし“自身”のもとに向かった。



『こんなところにいたんだね』


誰にともなく呟く。


『お帰り』


自分自身が帰ってきた嬉しさと、
今までの悲しさが溢れてくる。


それと同時に一つの小さな異変に気付いたの。


『え……!?』









あたしにはもう、時間はなかった。