たんぽぽ

ずっと叫んでた。



今までのあたしは見えていなかったのに。



今の茜くんには見えてるんだ。



どうして?憎いはずなのに、
今はもう、嫌いなはずなのに…。



『なんで……涙……?』



あたしの頬に伝う涙の正体はなに?



わからない。わかんないよ。



違う。本当はわかってる。



この涙の理由が。



あたし、嬉しかったんだ。



生きてるとき、茜くんに酷いことを言われたとき、



全然、目もあわせてくれなかった。
その場にいるのに、見てみぬフリされてたはずだった。



だけど今、死んでるのに、
見えないはずなのに、
あたしの姿が、茜くんに気付いてもらえたんだって。



どんな状況であれ、嬉しかっただけなんだ。



あたしって、なんて単純なんだろう……。


「……めん……ごめん、五十嵐」


『え……?』


ずっと動かなかった茜くんが口を開いた。
あたしはじっと、茜くんの目を見据えた。


「ごめんな、五十嵐。まさか、死ぬなんて思わなかった」



茜くんはうつむいた。



「ずっと、謝りたかった。……ホントなんだ!
 だけど、もう一人の自分に勝てなくて……」


「茜?ちょっと……何それ……そんな―」


「奈々たちの前では、悪い自分ばっかりが出てきて…
 ほんとはお前に申し訳ない気持ちで押しつぶされそうで…」


「茜!!」


「奈々!もうやめてくれよ。五十嵐と涼介のことが
 誤解だって、俺はもう知ってるんだ。
 だから、俺をこれ以上振り回さないでくれよ」


「あ……」



「俺、ほんとに五十嵐のこと、好きだったよ。
 奈々にあの時、五十嵐は俺のことなんか好きじゃないんだって
 言われて、ちょっと、ショックが大きかったんだ」


そんなことが……?


それで、茜くんはあたしに冷たかったの?


やっぱり、全部奈々のせいだったんだ。


茜くんはあたしのことを想ってくれてたんだ。


「茜!!いい加減にしてよ!!あたしだけ悪者にするつもり!?」


奈々が茜くんに近付いた。


茜くんは奈々の手を振り払うと、
きつく奈々をにらみつけた。


「いい加減にすんのはどっちだよ!?」


「あか……ね?」


茜くんは自分の両手をじっと見つめ始めた。


「あの時の、五十嵐を押さえつけたときの感触が
 まだ、しっかり残ってるんだ。
 バスケをしてても、ほかの奴等と遊んでても、
 いつだって五十嵐の“助けて”って声が
 耳に残ってるんだ……!!」