「涼介…」




聞き覚えのある声がしたのは、それから数日たった頃だった。




ふと顔をあげると、茜くんの姿が視界に映っていた。




「おぅ。どーした?」



「お前さ、あれ、やめろよ」


「…あれってなんだよ?」


わかっていた。本当は全部。



茜くんの視線の先に、
変わらず添えてくれる宮原くんのたんぽぽが
あることなんて…。


宮原くんはあたしを視線の端に入れると、
あたしを隠すように間に立った。



「あれ、五十嵐にやってんだろ?」



「・・・ああ」


「もうやめろよ。中埜たち、かわいそうだろ?
 奈々だって、あいつ、お前の事……」


「だからなんだよ?知らねぇよ……」



宮原くんが低い声を出して茜くんを睨みつけた。


「また“奈々”かよ。俺は寺嶋には言った筈だ。
 俺がなんであいつに気を使ってやらなきゃなんねんだ?」


「涼介、お前最低だよ・・・」


「最低なのはどっちだよ」



「……は?」



茜くんは言葉をとめて宮原くんを見た。



あたしも同じだった。




宮原くんは顔色一つ変えずに
茜くんを冷たい目で見ていた。



「俺、知ってるんだ。
 お前らが五十嵐にしたこと――」



「なっ……」



「み、宮原くんっ!?」