宮原くんは険しい顔つきであたしを見た。



「なんで・・・」



「自殺だって・・・、みんなそう思ってるけど、
 違うの」




あたしは宮原くんから視線を逸らしてそういった。
信じられないでしょ?



学校で、それも、好きな人に殺される感覚なんて
きっと、誰にも分らない。



「あたしは3人に殺されたの・・。
 そんな風に思いたくないけど、それが本当の話」



「嘘だろ・・?」





「ねぇ、どうしてかなぁ?
 どうしてあたしだったんだろう・・。
 こんな風に死んじゃうなら
 ピアノなんてやらなきゃよかった・・・っ!!
 茜くんなんて、好きにならなきゃよかった!!」





あたしは必死で叫んだ。



全ての原因は
あの埃のかぶったピアノと、




体育館を走り回る男の子の姿を必死で追いかけていた




あたし自身のせいだってこと、




分ってるのに、




分ってたのに、それでもあたしは
誰かのせいにしていたかったのかもしれない。




「五十嵐。・・んでそんなこと言うんだよ?」





「へ・・・?」




それまで黙っていた宮原くんがそう呟いた。


びっくりして振り返ると、
宮原くんはあたしの目をしっかりみて続けた。




「ピアノが弾けるのは・・・
 そんないい曲が作れるのは
 お前の才能だろ!?」




「宮原・・くん・・?」



「そんな奴等のために
 お前が我慢する必要なんてねぇだろ」




我慢・・・。




あたし、我慢してたんだ。
気付かなかった。



ずっと、奈々の顔色をうかがって、
それが逆に奈々の気に障って、




結局自分も追い詰めてた。




宮原くんは
どうして分ってしまうのかな?




あたしすらも気付かなかったのに、
彼はほんの少し話しただけで
あたしの気持ちを理解してくれる。




「俺さぁ、正直いって、
 お前に励まされてたから
 頑張れたこと、たくさんあんだよ」


「え・・・」



「俺も五十嵐の力になりてぇんだ」



宮原くんはそっと呟いた。



「ゆっくりでいいから、
 俺に全部話せよ。
 絶対、助けてやるって約束するから」




頬に、一瞬だけ伝う何かを感じた。




あたしがそれに気付いた瞬間、
とめどなく、涙が溢れ出した。



なんでだろう。



死んじゃってるあたしに
気付いてくれる人はいないのに、




生きていたときよりも




今、宮原くんとだけ話すことができる
この状況が




すごく、
すごく安心できた。




“飾らない、そのままの”




やっぱりこの曲は宮原くんだ。




たんぽぽの花言葉。




あなたはその言葉通りの人だったんだね。





こんなあたしにも、




“飾らない、そのままの”あなた。





だからあたしは




ゆっくり、一度だけ頷いたんだ。