宮原くんは驚いた顔をしてこっちを見ていた。




しばらくして、宮原くんはその綺麗な目に涙を浮かべた。




泣いてくれるの?あたしのピアノで?





宮原くんは、やっぱり優しい。


不良なんかじゃない。
荒れてもいない。


駄目なやつって、皆は馬鹿にするけど、
みんなは気付いてない。

本当の宮原くんのこと。






宮原くんはそっと涙を拭うと、また顔を上げた。
そして、ふっと微笑んで口を開くの。





「おかえり・・・・」






え?




その低い声は綺麗に響いた。



あたしの耳の奥にしっかりと残る。





「おかえり。五十嵐・・・」





宮原くん・・・・。
あたしに、話しかけてる?




嘘・・・。うそ・・・・。





だってそんなはずないよ。





「みや・・・はらくん・・・?」





そっと呟いた。




宮原くんは、今度は大きく笑った。



「なんつー顔してんだよ・・」





「え・・・・?」





「やーっぱり、アンタのピアノ。癒されるわ」






そんな・・・。





ありえない。





ありえないけど、
嬉しかった。





届いた。




あたしのピアノが。




あたしの声が。





そして、






あたし自身が・・・。






「宮原くん・・・。あたしのこと見えて・・」








「ずっと、ずっと見えてたよ。あんたが
 俺を助けてくれたあの時から・・」






助けた日?




だって、そうしたら宮原くんは最初から・・・。





「あたしが近くにいたこと、知ってたの?」





宮原くんは小さく頷くと、また笑って見せた。