息を静かにすう。




あたしの指が、しなやかに鍵盤の上を滑る。





楽しい。
これが、生きてるときの、あたしの好きだったもの。





ああ。
あたし、こんなにもピアノが好きだったなんて、
思いもしなかった。




コンクールなんて自分には縁がないと思ってたあたしが
出場して、褒められて。





こんな姿になっても、ピアノが楽しいと思えてるんだ。





今は、どんな気持ち?





曲が静かなメロディーを終えて、あたしの手がはねる。



悲しげな転調が繰り広げられたあとの、




柔らかなカンタービレ。






歌って、歌って、歌い続ける。






そう。




そうだよ。





これが、あたしのやりたかったピアノ。




自分の思いを、曲に乗せて演奏すること。





やっと、死んでからだけど、やっと。





願いがかなったの。






それは誰のおかげだろう・・。





分ってる。





今、ここにいるよ。











曲を終えて、窓の外を見た。







宮原くん。





全てはあなたに出会ったおかげ・・・。