もう随分、使われていないそこは
埃だらけで静けさだけが漂っていた。




ピアノの前にそっと座る。



窓の外を見ると、まだ、
宮原くんがこっちを見て手を合わせていた。





あたしはため息をついてピアノに向かった。





「出来るかな・・・」





何を弾こう。




そもそも彼は、あたしだって分るのかな・・・?





そんなわけないよね。




あたし、死んじゃってるからさ・・。




何を弾けばいい?





コンクールの曲?




ううん。実はね、あたし。
もっと弾きたい曲があるんだ。





弾けるかな・・・。
失敗したらどうしよう・・。
出来なかったらどうしよう・・。





もう一度、宮原くんをみて、深呼吸した。




「大丈夫だよね・・?」





あたしは誰にでもなくそう呟いて、鍵盤を見つめた。





大丈夫。やれる。





弾こう。




あたしの曲を。





彼の、曲を・・・。