険しい顔つきでピアノのほうをじっと見つめて、
手を合わせる宮原くん。




その手は真っ赤になっていて、
頬にはあのときの絆創膏がついていた。





ただ、一つだけ、違うものがあったの。
あたしにはすぐに分った。

だけど、それをみたら、
涙が溢れ出した。



ぽろぽろ、零れ落ちて止まらないの。





こんな寒い真冬の日、
タンポポなんて、生きているはずないのに。






それはそこにあったの。





だけどね、それはたんぽぽじゃないんだよ?






だけど、それはタンポポだったの。







「これ・・・造花・・・・?」






普通はさ、造花だっていっても、本物と区別がつかないくらいの
そんな高度なものなはずだけどさ、



それはすぐに本物じゃないってわかった。






不器用な自身を、その花全体から感じられて、
どこか危なげなつくりになっていたから・・・。







「宮原くん・・・もしかしてこれ・・・」






本物よりも、すごく温かい花。





「宮原くんが・・・??」





本物よりも、ずっと優しい花。





そして、





本物に負けないくらい、強い花・・・。






あたしは涙をそっと拭って、その場を離れた。




あたしの声は届かない。
姿だって見えない。




だったら、





だったら・・・。






「これしかないじゃん・・・」





あたしは音楽室の中にいた。