それは偶然だった。



この日、あたしは珍しく、ずっと教室にいたの。




そんな時、再び、奈々の会話をきいた。



「ねぇ、奈々・・。もうやめて」




「ね、何言ってんの?あんたたち、あそこまでやって
 あとはあたしに説教?いいから早くやってよ!」



美祐が泣きそうな顔で奈々に詰め寄るところだった。
見えないのに、つい隠れてしまう自分がいて悲しくなった。



奈々はイライラして美祐の肩をゆすった。



「ほら。宮原くんの花、早く確認してきなさいよ。
 もしあったら、分ってるでしょ?」




宮原くんの・・・花?




もしかして・・・。




『奈々がやったの・・?』



あたしは奈々の前にたった。


もしかしたら、あの日からぱったり来なくなったのも、
タンポポがそこになくなったのも全部。




『また・・・あんたなの・・・??』




あたしは呟いた。
怒りがこみ上げてきて、手に力がはいる。



顔を上げて、思い切り腕を振り上げた。



思い切り、殴ってやりたかった。
だけど、







『綺麗な手・・・。だから、喧嘩なんてしちゃだめだよ?』






殴っちゃ駄目・・・。そう、自分が言ってる。





前にも、そういったじゃない。





振り上げたその手を下ろすと、自然と涙が溢れた。



悔しい。
宮原くんの思いが踏みにじられたのに、
あたしは何も出来ないなんて・・・。





教室を飛び出して外に出た。



雪が降ってる・・・。




寒いね。こうなっても、寒いって感じるよ?
寂しいね。
1人じゃ、寂しくて、泣きたくなっちゃうの。



『宮原・・くん・・・!!』



あたしがそっと呟いたとき、それは起きた。





『え・・・・??』






真っ白な、外の冬景色の中、
あたしは、春と変わらないものを目にしたの。