たんぽぽ

あたしはよろよろと立ち上がって教室を出た。




どこをどう歩いたかわからない。




悲しかった。




死んで初めて、悲しいって思った。




そっか、だからだ。


だからあたしは、嬉しくなかったんだ。


なぁんだ。
わかってたじゃん。



初めから。全部。




茜くんは初めから、あたしを想ってはなかった。




あのきれいな花束も、何の意味もこもってなかった。




泣けない。泣けないよ?こんなの。



見覚えのある場所に来た。



音楽室前。



あたしは立ち止まった。



『え…?』











いつもの、小さなタンポポの前で、
手を合わせる人がいた。







傷だらけの険しい顔で、じっと、中のピアノを見つめながら、




そっと手を合わせていた。










ふと、涙が零れた。






涙がゆっくりと頬を伝う。





あれ?なんだろう。この涙はどうして?






あたしは、この人をよく知ってる。





わかってるじゃない。







あの時、喧嘩をしてた宮原と呼ばれた男の子。




毎日、決まった時間に聞こえる低い声。





だけどね、
その傷だらけの頬には、





鍵盤が彩られた絆創膏がはられていたの。