奈々は何か呟いてた。



じっと、地面を睨みつけて。



だから、気付いたの。
いつもと違うんだって。



やっぱり、コンクールのときのショックがまだあるのかな?
あたしはふとそう思った。



『奈々・・・・?どうしたの?
 てか、今までどうして学校休んでたの?』



『随分、美祐と2人で楽しそうだったね・・・』



『え・・・・?』



あたしは息をのんだ。
なんで知ってるの?学校の様子のこと・・。
まさか、学校に来てたんじゃ・・・。



『戸川くんとも、なーんか仲良くなってるみたいだし』



茜くんとのことも知ってるの?



一体、奈々は何処で見てたんだろう。




そう思うと、初めて奈々が怖いと思えた。




『ねぇ、どうして?どーして真奈美だけなの・・・?』



奈々・・・・?
ねぇ、どうしちゃったの?


何がいけなかったの?



もう、何がなんだかわかんないよ・・・・。




『あたしからピアノを取って、友達を奪って、おまけに・・・。
 おまけに、好きな人まで・・・』




好きな人・・・?
え?だっ、奈々の好きな人は別な人だって・・・・。




『とったって・・・。そんなことしてないよ?
 ピアノだって・・。あたし、奈々が最下位なんて信じられなくて
 それで・・・!!』



『嘘よ!!上手い上手いって褒めちゃって、
 本当は心の中で笑ってたんでしょ!?』



『違う!あたしはただ、本当に上手いって思ったから・・っ!!』



ねぇ、奈々。
どこからあたしたちはすれ違ってしまったの?



じゃあ、どうすればよかったの?



あたし、何ていえばいいのか分らなかった。



黙ってしまったのが、余計に奈々を怒らせた。



奈々はあたしに近づいて、あたしを思い切り押し倒した。