あたし、五十嵐真奈美は屋上にいた。


フェンスを越えて、1人、足をぶらぶらさせて座ってる。


大きなため息も、広いグラウンドで頑張っている


部活組みの大きな声にかき消されて、全く聞こえてない。


『はぁ、なーんだかなぁ・・・』


あたしはそっと呟くと、真下を見つめた。


みんな、みーんな動いてる。


止まってるのは、あたしだけ。


ふと、耳を済ませると、校内放送の音楽が流れた。


『あ。この曲、弾いたことある・・』


懐かしいな。ピアノ。


聞こえてきたのはクラシック曲。


目を瞑って、膝の上に両手を置く。


曲に合わせて動くあたしの指は、


まるであたしの指じゃないみたい。


何だろう。この感覚・・・。




ぎぃーっ



突然、静かな空間が


さび付いた鈍い音で破られた。


びっくりして振り返る。


「でさぁ、彼氏が他の女と遊んでるとこ見て、
 問い詰めたら逆ギレされてぇ!!
 超腹たったからさぁ!別れてやったし。
 あんなんこっちからお断りだっつの!!」


奈々・・・。


あたしは奈々のこと忘れない。


こいつだけは、絶対に・・・。