たんぽぽ

それからあたしは屋上に行かなくなった。

もちろん、あの音楽室にだって行ってない。


宮原くんとの練習も出来ないまま、
コンクールの時期は差し迫っていた。


あたしがどこにいるかって?


ここは、あのプールの中。


あたしはもうここに存在していないから、
プールの中に入ったって何も感じなかった。


ただ、視界が揺らいでいるだけ。


宮原くんは、どう思ってるかな?
あたしのことを探してくれているのかな?


きっと今頃、美香と2人でいるんじゃないかな?


色んなことを考えると胸が痛い。
あたしはゆっくりと目を瞑った。



美香は約束通り、広めないでくれているみたいで、
何か騒ぎになっているっていうことはなかった。



今はそれでいいのかもしれない。
ただ、宮原くんと会えないだけで・・・。



『宮原くん・・・』



あたし、もう宮原くんにかかわらないほうがいいのかもしれない。


彼に迷惑をかけるなら、
友達が、悲しむことになるなら、


一途に宮原くんを想う美香が、それで幸せなら・・・。




あたしがそんなことを思っていると、
頭上から声が聞こえた。




あたしの、よく知っている声。



『宮原くん・・・』